内縁の妻と子に遺産を相続できる4つの方法とメリット・デメリット【税理士が解説】
最終更新日時:2024年1月9日
法律上の夫婦ではない「内縁の妻」「内縁の夫」は、遺産を相続できる『法定相続人』になることができません。
そのため、内縁の妻や夫、子に自身の財産を残したい場合には、事前の対策が必要となります。
この記事では、実際の事例をもとに、内縁の妻と子に遺産を相続するための4つの解決策とそれぞれのメリット・デメリットを解説します。
当事務所にご相談いただいた状況
ご状況
・山田太郎さんには、正妻とその子供がいる
・山田太郎さんは現在、内縁の妻(佐藤文子さん)と、共同生活を行っている。
・山田太郎さんは佐藤文子さんと二郎さんに財産を残したいと考えている。
問題点
・内縁の妻(佐藤文子さん)とその子供(二郎さん)は、遺産を相続できる『法定相続人』になれない。
・相続人でない佐藤文子さんと二郎さんは、山田太郎さんの遺産を相続することができない。
・2人に遺産を残すためには、対策が必要。
解決策:内縁の妻へ相続する方法
この場合の解決策は4つあります。
①遺言書を書く
②生命保険(死亡保険)を契約する
③養子縁組を結ぶ
④生前贈与をする
順番に解説していきます。
内縁の妻へ相続する方法①:遺言書を書く
ポイント
①遺言書を作成することで、法定相続人以外にも財産を遺すことが可能です。
②遺言書の内容は、執筆者本人次第なので、自由に死後の財産の相続先を決めることができます。
遺言書の種類
遺言書を書く場合には、遺言書には種類があることを知っておく必要があります。
主に書かれる遺言書の種類は下記の2種類です。
①自筆遺言証書
⑴誰に何を相続させるか、⑵記入年月日、⑶署名と押印、⑷訂正方法に注意する必要があります。
⑴⑵⑶⑷を踏まえて、全て自筆で遺言書を作成しましょう。
②公正証書遺言書
公証役場で公証人と作成を行います。家族や関係者以外の証人が2人必要です。原本は公証役場で保管するため、保管も安心です。
作成には公証人手数料がかかります。
遺言書を書く場合の注意点
自分で作成できる自筆証書遺言と第三者に作成してもらう公正証書遺言は、どちらにもメリット・デメリットがありますが、相続の専門家としては、後者の公正証書遺言をお勧めします。
自分で作成する自筆証書遺言では、書き方によっては法的な要件を満たさず無効になってしまったり、相続の手続きに使えなくなってしまったりするケースがあります。
反対に公正証書遺言の場合は、法律や税務の知識に精通している専門家と一緒に作成するため、遺言書が無効になってしまう心配はなく、さらに原本が公証役場で保管されるため、紛失や捏造の恐れがなく、ご自身の遺言を確実に遺すことができます。
また今回のケースでは、相続人(山田太郎さんの血縁者)の相続分が極端に少ないと相続人間で揉めて「争族」になる可能性があるため、注意が必要です。
内縁の妻へ相続する方法②:生命保険(死亡保険)を契約する
ポイント
①事実婚・内縁関係のパートナーを受取人に指定した生命保険に加入できる可能性があります。
②第三者が生命保険の受取人になれるかどうかは、個別の事情を総合して有効性が判断されます。
第三者(事実婚パートナー)が受取人になれる条件
事実婚のパートナーが保険金の受取人になるためには、下記の条件をクリアしている必要があります。
①双方に民法上の婚姻関係のある配偶者がいないこと
②一定期間同居していること
③一定期間生計を共にしていること
※生命保険の受取人になれるのは、原則戸籍上の配偶者と2親等以内の血族である法定相続人のみです。
※上記3点について、生命保険会社の基準を満たしていれば、事実婚・内縁関係のパートナーでも生命保険の受取人になれる可能性があります。
生命保険を契約する場合の注意点
生命保険を契約する場合には、下記3点に留意しましょう。
①生命保険の受取人は相続人のみとしている生命保険会社が多いため、契約が困難な場合がある。
②生前の出費が増える。
③相続人(山田太郎さんの血縁者)に生命保険を契約したことが知られると、トラブルになる可能性がある。
参考:「不倫相手は生命保険を受け取れるのか」判例
判例①では生命保険契約が有効となり、判例②では無効になりました。
判例① 最高裁判所 平成17年12月9日
正妻との関係は実質的に破綻していて、不倫相手と実質的に夫婦のような関係にあったという事案です。
不法な動機による契約締結ではないとして、不倫相手を受取人とする生命保険契約を有効としました。
判例② 東京高等裁判所 平成11年9月21日
死亡保険金の受取人指定は、不倫関係の維持継続を目的とし、不倫関係の対価としてされたものであり、公序良俗に反して無効であると言わざるを得ないとし、生命保険契約自体は有効で、受取人部分が無効となり、相続人に生命保険金の受取権限があるとしました。
内縁の妻へ相続する方法③:養子縁組を結ぶ
ポイント
①実子と同じ権利が認められるため、財産を平等に分けることができます。
②要旨は法定相続人であるため、法的に相続が認められます。
養子縁組の手続き方法
養子縁組をするには、養子縁組届出書を作成し、必要書類を揃えて養親もしくは養子の本籍地(又は居住地)の市区長役場に提出してください。
養子縁組をする場合の注意点
養子縁組をする場合は、下記の2点に留意しましょう。
①相続人が増えることで、遺産分割で揉める可能性がある。
②佐藤文子さんと二郎さんは、相続税が2割加算される。
内縁の妻へ相続する方法④:生前贈与をする
ポイント
①生前贈与では、財産を譲る相手を自由に選ぶことが可能です。
②相続権は関係ないため、内縁の妻・その子供に遺産を譲ることができます。
生前贈与の流れ
受贈者と受遺者の間で贈与契約書を作成し、財産を贈与します。
年間の贈与額が110万円を超えた場合には、翌年の確定申告で贈与税申告が必要になります。
生前贈与する場合の注意点
生前贈与をする場合は、下記の3点に留意しましょう。
①贈与税がかかる場合がある。
②内縁の妻は、贈与税の配偶者控除を受けることができない。
③煩雑な手続きはないが、佐藤文子さんと二郎さんは贈与税の申告をする必要がある。
内縁の妻へ相続する各方法のメリット・デメリットとオススメ度
内縁の妻と子に財産を遺したい場合は、
①遺言書を書く
②生命保険(死亡保険)を契約する
③養子縁組を結ぶ
④生前贈与をする
これら4つの方法が有効です。
そして各解決策のメリット・デメリットとオススメ度合いは以下の通りです。
上記のメリット・デメリットを参照いただき、それぞれのご状況に則した対策をしましょう。
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